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「切らない眼瞼下垂症手術」の術後によくある経過とその修正について

「切らない眼瞼下垂症手術」(埋没タッキング法)をお受けになられた方の術後によくあるご相談についてその一例をご紹介いたします。

糸留めのみによる切らない眼瞼下垂症手術はうまくいくととても魅力的な手術ですが、術後の後戻りやそもそも眼瞼下垂症の改善度が乏しいことがあります。

今回はそのような経過にあてはまる症例をご紹介いたします。

症例紹介

症例紹介の大きな流れ

いわゆる「切らない眼瞼下垂症手術」をお受けになられた後によくある例についてご紹介します。

初診時、当院にて皮膚切開による眼瞼下垂症手術をご提案しましたが、他院Bクリニック様にて眉下切開および切らない眼瞼下垂症手術2点留めをお受けになられました。
その後、眼瞼下垂症が改善していないように感じるとのことで当院にて皮膚切開による眼瞼下垂症手術をご本人様の希望により施行しました。

以下、詳細な流れになります。

初診時

初診時

眼瞼下垂症を治療したいということで当院にご相談にこられました。

左右に眼瞼下垂症があり特に左目の眼瞼下垂症が強く存在しておりました。

当院では眼瞼下垂症の治療を皮膚を切開して行う場合とまぶたの裏から行う場合がありますが、どちらかというと瞼の裏から行うことの方が多くあります。

しかしながら今回の症状の場合には皮膚を切開して腱膜を固定することをご提案いたしました。

その上でもしまぶたのたるみや厚ぼったさが気になった場合には後日眉毛下切開法を検討するとよいと思い、そのようにお伝えしました。

その後の経過

当院でのカウンセリングの後、一般診療形成外科様(Aクリニック様)に受診され、やはり皮膚を切開することによる腱膜固定(通常の眼瞼下垂症手術)のご提案があったとのことでした。

その後、また別の美容外科様(Bクリニック様)でご相談されたところ「眉毛下切開(まぶたのたるみ取り)をすると眼瞼下垂症が治ると言われた。」とのことで眉毛下切開をお受けになられていました。

しかしながら眉毛下切開をしても眼瞼下垂症は治らなかったため、もう一度Bクリニック様にご相談にいかれたところ、たしかに眼瞼下垂症は改善していないので「切らない眼瞼下垂症手術(2点留め)」という手術をお受けになられたとのことでした。

それでも眼瞼下垂症が治らず三角形の目になったので治したいとのことで再度当院にご相談に来られました。

二回目のご相談

他院様「切らない眼瞼下垂症手術」術後2ヶ月

ご相談のみをお引き受けするつもりで診察をさせていただきました。

この時点ではまだ治療をお受けになられてから2ヶ月程しか経っていませんでした。

拝見しますと、確かに眼瞼下垂症の症状は初診時のときのままでした。

眉毛下切開術をお受けになられていたため眉毛は下りてきている状態でした。

まだまだ経過中であるため治療を担当してくださったBクリニックの先生の術後経過の受診を強くお勧めしましたが、ご本人様はこのまま経過をみても眼瞼下垂症が治るとは思えないとのお考えでした。

2回目にご相談に来られた時にご本人様曰く「眼瞼下垂症の治療を受けたくて眉毛下切開法を受けた」ということに正直違和感を感じたため、ご本人様に「おっしゃっている話をうのみにはできません。」と正直に私の気持ちをお伝えしました。

実は「瞼のたるみを取りたい」または「眉毛を挙げる重みも気になっていた」のでそのようなご提案があったのではないかと思ったからです。

しかしながらご本人様は「そうではないです。Aクリニックの形成外科の先生が書いてくれた皮膚切開眼瞼下垂症の手術方法の紙をBクリニックの先生に見せて眼瞼下垂症を治したいと伝えました。」とおっしゃられました。

自分の初診時の判断とBクリニック様でお受けになられた治療方針の違いにどうしても理解できない部分があったため治療をお断りするべきだと考えておりました。

また、もしいわゆる「切らない眼瞼下垂症手術」という埋没法に近い方法で治療をお受けになられていれば腱膜を瞼板に直接固定していない可能性があるため、腱膜を瞼の裏から固定してもらえば瞼は開く可能性がある旨をお伝えし、治療を担当してくださったBクリニックの先生に再度ご相談するよう再三ご提案させていただきました。

治療を担当してくださったBクリニックの先生もこのような流れで経過がうやむやみなることが不本意であろうことを考え大変心苦しく思いましたが、ご本人様の強い希望があり、修正術を行わせていただくこととなりました。

当院修正手術直前の状態

修正術前 開瞼

正面を見た状態

修正術前 上方視

上を見た状態。眼瞼下垂症により黒目が隠れている。

修正術前 閉瞼

目を閉じた状態

修正術前 下方視

下の方を見た状態

手術中

「切らない眼瞼下垂症手術」の糸

「切らない眼瞼下垂症手術」の糸です。瞼板にはかかっていませんでした。

タッキングによる結膜のもり上がり

瞼の裏です。タッキング埋没法による結膜の縫い縮めのもりあがりが確認できます。

いわゆる「切らない眼瞼下垂症手術」は埋没法のように糸を瞼に通す手術ですが、通常皮膚切開をして結び目を解けば糸が抜けることが多いです。

しかしながら今回はどうやら上眼瞼挙筋(まぶたを開ける筋肉)の中か裏で何か結び目があったのかひっかかって簡単に取ることができませんでした。

「切らない眼瞼下垂症手術」は単なる埋没法ではないため個々の先生によって糸のかけ方に違いがあって普通です。

上眼瞼挙筋とミュラー筋を全部剥離するか、上眼瞼挙筋を割って結び目を探し出すか悩みました。
眼瞼下垂症を治すだけであれば必要のないそれらの操作によってかえって瞼を開ける機能が低下してしまうリスクを考え今回は泣く泣くその糸を取りさることを断念しました。(手術中にご本人様に同意を得ました。)

埋没法の糸は敢えてとらずとも眼瞼下垂症の手術は可能ですが、眼球側に残した糸が飛び出てこないかだけは後日経過を診る必要があります。

本来であれば当院ではなく「切らない眼瞼下垂症手術2点留め」をしてくださったBクリニックの先生に調整手術をご依頼されればこのように糸が取れないということはなかったかと思います。

修正手術直後

術直後

術直後 上方視

予定通り腱膜を左右とも固定してできるだけ左右差をなくして、三角目になっていないことを確認して手術を終了しました。

修正術3ヶ月後

術後3ヶ月 開瞼

術後3ヶ月 上方視

術後3ヶ月 閉瞼

術後は予定通り眼瞼下垂症は改善され、三角目もなくなりました。
若干まぶたのたるみが出ておりましたので初診時にお伝えしたように気になれば眉毛下切開法にて取ることもできる旨を再度確認しましたが、ご本人様が希望されませんでした。
今後、眉毛下切開法を追加されれば額のシワもより軽減されると思います。

修正前後の比較

修正術前

修正術 術後3か月

修正術前

修正術 術後3か月

修正術前

修正術 術後3か月

まとめ

眼瞼下垂症に対する治療方針は診察する医師によって違って当然です。
何が正しいとか正しくないなどということはありません。
治療方針は医師と患者様とのそのときの話し合いで決まるものだからです。
この症例紹介のように「切らない眼瞼下垂症手術」をお受けになられて眼瞼下垂症の改善具合が乏しい場合には担当してくださった先生に再度腱膜を固定していただくことをご依頼されることが最もよいと思います。
「切らない眼瞼下垂症手術」の糸の入り具合を知っているのはその先生しかいないからです。

筆者紹介

著者 石川勝也

役職 プラストクリニック院長

資格 日本形成外科学会専門医
   日本美容外科学会専門医(JSAS)